思い出すことなど、など(第23話)

第23話:ギリシアの思い出 7

 今日は、サバティカルでアテネにやって来たK先生との思い出を。
K先生は、ギリシア史がご専門で、当時目白駅の近くのG大学で教鞭を執られていました。直接、教えを受けたことはありませんが、研究会などで何度かお会いしていました。
 K先生は、アテネ滞在中はBSAに所蔵していましたが、私と同じくアパートを借りて生活をしていました。半年ほどアテネに滞在したと思いますが、その間、精力的にギリシアの遺跡を訪ねていました。
 K先生の借りたアパートは、我が家から歩いて10分くらいのところで、何度か我が家で食事を共にしました。その中で、今も印象に残っているのは、「アジの干物」でしょうか。(当時、私は自分でアジを三枚におろして、ベランダで干して干物を作っていました。暇だったのですね。笑い)
 K先生は、「アジの干物」を見て、感動していました(笑い)。
確かに、いつもオリーブ油たっぷりのギリシア料理に飽きていたのでしょう、本当においしそうに食べていたのが忘れられません。

 K先生のエピソードをもう一つ紹介しますと、たまたまローマ史のご専門のM先生がアテネに滞在する機会がありました。そのときにK先生ご自身は旅行中なので、その間M先生にお部屋を提供することになりました。私は、M先生をアパートにお連れする、という役を仰せつかったのですが、お部屋でK先生の性格をかいま見るものに出会いました。
 それは、表に一枚の紙が貼られてある冷蔵庫でした。紙には冷蔵庫の中にある食品が細かく書かれていて、最後に「どうぞ、ご自由に召し上がって下さい」というような言葉が書いてありました。
M先生と顔を見合わせて、どちらからともなく「几帳面ですね……」。改めて、K先生の几帳面なまじめな性格を、再確認しました。

 最後に、K先生が帰国するにあたって、我が家に挨拶に来てくれました。別れ際になって、先生はしきりに計算を始めました。そして、おもむろに、「空港までのドラクマは確保したので、後は差し上げます」と言って、お財布から残りのドラクマを私に手渡してくれました。これには驚きましたが、貧しい留学生の身、有り難くちょうだい致しました。

 K先生も、先に紹介した私の三人の先生と同じく、すでに鬼籍に入られましたが、先生とのアテネでの交遊は、本当に懐かしい思い出です。

次回は、私が現代ギリシア語を学んだThe Athens Centerについて、ご紹介します。

*私のお気に入りの言葉
「疑ってみることで我々は問を発し、問を発することで我々は真理を学ぶ」
ーアベラール

*今日のニケ
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