序章の序

<序章の序:歴史学入門 ーなぜ歴史学を学ぶのか>

“ 我々が、「歴史」を学ぶ意味はどこにあるのでしょうか。

 最初に,「世界史」を学ぶ意味から考えて見たいと思います。

 第一に、「事実」としての過去から現在に至る「世界の歴史」を知ることは、現在のこの世界そのものを理解することにつながると思います。

今の国際社会や、我々を取り巻く現代の社会を正確に理解するには、各国の歴史を知ることが必要であることに、異を唱える人はいないと思います。

例えば、宗教を例に取れば、キリスト教の歴史を学ぶことで、ヨーロッパの歴史の一面(精神史)をより深く理解することが可能になるでしょうし、同様にイスラーム教の歴史を知ることで、西アジア(中近東)並びに東南アジアの理解も深まるでしょう。

また、ヨーロッパ・アメリカ・アジア・アフリカ等の諸地域の歴史を知り、その歴史的な諸関係を知ることは、現在の国際社会の理解の一助になると思います。

これからの国際社会を生きるには、こうした各国の歴史的な知識が必要となるでしょうし、また現在の国際情勢は我々の国内の生活に無関係であるとはいえません。

さらに、より大事なことは、各国の歴史を知ることは、そこに住む人々に対する理解やあるいは共感を深めて、一国のナショナリズムに陥ることなく、できるだけ偏見を排して他国を見る目を養うことができるのではないでしょうか。

 次に、「歴史を学ぶ」ための方法論ですが、これには二つの方法があると思います。

一つは、「時間軸をずらす」ことです。

ヨーロパに例をとれば、古代ギリシア・ローマの奴隷制、中世ヨーロッパの封建制、近世・近代市民社会、こうした時代を知ることで、今の現代を相対化できます。

もう一つの方法は、「空間軸をずらす」ことです。

同時代の中国、朝鮮、中近東、ヨーロッパ、アメリカなどの空間を知ることで、同じように自己を相対化できます。

こうした方法で、先史時代から現代の地球上の歴史を全体的に俯瞰的に見ることで、現代の世界をより正しく認識することが可能になるのではないでしょうか。

 最後に、従来、我が国の「世界史」教育に陥りがちだったといわれるヨーロッパ中心史観から脱却する必要があると思います。

例えば、色々な角度から、イスラームから、遊牧民から、アフリカから、また他にも従来「周辺」と考えられていた地域から見た様々な「世界史」を学ぶことによって、現在私たちが当たり前のように思っている「世界史」の理解が決して絶対ではないことがわかると思います。”

*上記の文章は、私が高校の非常勤で「世界史」の最初の授業に生徒に配布したプリントを、若干手直ししたものです。

なお、この文章の一部は、「参考文献」に挙げた津野田興一『世界史読書案内』岩波ジュニア新書(2010)を参考にさせて頂きました。

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